Carapaz Crowned King
グランデパールのわずか2週間前、カラパスのシーズンは危機に瀕していました。しかし今、彼はKOMジャージを獲得し、2024ツール・ド・フランスで最も奮闘した選手の一人に選ばれたのです。
2024ツール・ド・フランスは、レースをする者にとっても観戦する者にとっても忘れがたい大会となりました。EFエデュケーション・ファースト-イージーポストチームにとっては、今後も語り継がれる大会になることは間違いありません。とりわけ、ある選手にとっては、文字どおりキャリア最高の栄冠となったことでしょう。
トスカーナでの第1ステージの酷暑から、フランスに渡りニースでの第21ステージまで、リチャル・カラパスはシフトダウンすることなく走り続けました。LAB71 SuperSix EVOを駆るカラパスは、オリンピックロードレースで金メダルと、ジロ、ツール、ヴエルタの3つのグランツールすべてでステージ優勝を成し遂げた史上初のロードレーサーとなり、さらにマイヨジョーヌを着た初のエクアドル人(ピネローロからヴァロワールまで)、ツールのステージ優勝をした初のエクアドル人(第17ステージ:サン・ポール・トロワ・シャトー〜シュペルデヴォリュイ)、エクアドル人初のマイヨアポワ(山岳賞)を手に入れ、エクアドル人初の総合敢闘賞にも選ばれています。
マイヨポワと総合敢闘賞について、もう少し分解してみましょう。
ツールはプロトンで最速のライダーだけに報いるものではありません。ライダーたちの総合タイムの裏付けとなるのは、数々の上りやスプリントで獲得できるポイントです。上りの頂上やスプリント区間で、最初に到達することで最大50ポイントを獲得できます。筋骨隆々のスプリンターやしなやかなクライマーは、3週間のレースを終えて総合最速タイムを出すことはできないかもしれませんが、戦略的なタイミングでのアタック、強力なチームメイト、そして驚異的なスピードがあれば、自分たちが最高の実力者であることを証明することができるのです。
カラパスが最も得意とするのは、重力に逆らい山の頂上を目指すことです。LAB71 SuperSix EVOに乗る彼は、この3週間で127点のクライマーズポイントを獲得したのです。
クライマーポイントのリーダーは、かの有名な赤い水玉ジャージを着ることができます。最終ステージでは、ライバルたちがいたにもかかわらず、カラパスはそのジャージを守り切ったのです。彼は、第19ステージでマイヨポワジャージを着た日から、ニースのまで着続けたのです。
カラパスの山岳賞獲得により、エクアドルの自転車競技レベルの高さを世界中に轟かせ、ジョナタン・ナルバエス、バイロン・グァマー、ヨナタン・カイセドなど、この10年で世界的な才能を持つ選手たちを輩出し、新たなホットスポットとして注目が集まっています。
第3ステージを終えてエクアドル人初のマイヨジョーヌを手にしたカラパスは「ワールドツアーに参加しているエクアドル人は少ないけれど、今回のことが起爆剤になり、ロードレースが発展することを願っている。」 とインタビューに答えていました。
さらに嬉しいこと、カラパスは総合敢闘賞にも選ばれています。レース主催の審査員によって授与されるこの栄誉は、レース全体において最もアグレッシブであるとみなされた選手に与えられるもので、プロトンの前方で最も多くの時間を逃げに費やした選手に与えられます。この賞にははっきりとこう書かれています:"もっと動き続けたライダー"と。
カラパスは、ツール開幕2週間前まで、決して良い状態とは言えませんでした。ツール・ド・スイスで落車し、直後に重い病気にかかったのです。昨年のツール初日で激しい落車にあいレースを去ることになってしまい、彼とEFチームはひどく落ち込みました。バイクが道路脇へ滑るように、最も重要なレースも流されてしまったのです。今年も同じようなことになってしまうのだろうか? 誰もが脳裏をよぎりました。
しかし、そんな心配無用でした。今年のツールは間違いなくカラパスにとって過去最高の成績でした。ツールは、どのチームにとっても最も重要なレース。リーダージャージまであと少しという年は何度かありましたが、最終的に逃すことが続いてきまいた。しかし、ついに歴史は変わりました。
ときに "トゥルカンの豹 "と呼ばれるリチャル・カラパスは、ついにその座を射止めたのです。