A Fallacy of Normality
EFエデュケーション・NIPPOがツール・ド・フランスを駆け抜ける
2021年6月26日は、今までのツール・ド・フランスの歴史上、2つの連続したレースで最も激動のレースでした。急ピッチで行われたトレーニングスケージュール、パンデミックから日常の生活に戻りたいという期待、そして選手のストレスも相まって、ツール・ド・フランス2021の初日は非常に混乱の嵐でした。
ピンクとネイビーのジャージを身にまとったEFエデュケーション・NIPPOは、レースのために入念に準備したバイクに乗り、激しいツール・ド・フランスに立ち向かいました。ライダーたちはしっかりトレーニングを重ね、自信に溢れていました。チームに全幅の信頼をおいて。ライダーたちに「EFとは?」と尋ねれば、誰もが「家族」と答えます。様々な国から選手が集まった EFエデュケーション・NIPPO は強い絆で結ばれ、世界中にファンがいます。
多様な国から来たライダーたちには、さまざまな才能があります。今レースは、8人中3人が初めてツール・ド・フランスに参加となりました。この3人の情熱は、他の5人のベテランライダーにも伝わり、さらに楽しいツールとなりました。ツール・ド・フランス8回目出場のリゴベルト・ウランは、エネルギッシュなライドスタイルとは対照的に、穏やかな雰囲気でチームをリードしました。チームの揺るぎないサポートにより、リゴはツアーのダークホース候補として登場しました。
チームプレゼンテーションの後、プロトンが、ついにブレストから出発しました。チームとスポーツディレクターは全員、目的、準備、信頼で繋がっています。ゲームプランが開始され、チャンスを掴んだセルジオ・イギータが第1、第2ステージを8位でフィニッシュしました。
猛烈に速く、シンプルな新しいキャノンデールTTマシンに乗り、4人のライダーが177人中トップ20に入りました。マグナス・コルトが12位、リゴベルト・ウランが13位、シュテファン・ビセガーが18位、ニールソン・パウレスが19位でした。
チーム総合2位で第7ステージの長い丘陵コースに入ったとき、チームの士気は高く、笑顔に溢れました。マグナス・コルトはル・クルーゾで見事な登坂力と印象的な口ひげを披露し3位でフィニッシュ。チームにとって素晴らしい1週間の締めくくりとなりました。
第2週目、チームのエネルギーは「ハイ」モードでした。アシストたちに全面的にサポートされた謙虚なチームリーダーのリゴは、第9ステージで個人総合の3位へ浮上。この激しいレースの翌日はゆっくり休むことができました。激しかった最初の3分の1のレースについて個々の経験やポイントを共有したり、リカバリーに費やす1日となりました。
マグナス・コルトの献身的な走りと、チーム全体のパフォーマンスにより、第10ステージではずっとリーダーを守ることができました。コロンビアのウランは個人総合で3位をキープ。第11ステージで迫りくるモン・ヴァントゥに備え、クライマーは体調を整え、グリコーゲンを回復させ、チームキャプテンを守るプランを再確認しました。EFチームはほかの選手と異なり、モン・ヴァントゥに二度登ることをとても楽しみにしていました。長いヒルクライム、きつい斜度、最適なギアを選択するために頻繁に行われるシフトチェンジ。これがキャノンデールのヒーローチームです。雨、晴れ、雹、事故、追突、勝っても負けても、我々のチームは笑顔と情熱で前に進んでいきます。彼らは仲間と共に最高のステージでライドができる機会を楽しんでいます。
111番のライダーは激しい上りを前に、喜んで挑みます。リゴベルト・ウランはチームのサポートを受け第11ステージを5位でゴールし、7月7日の終わりには個人総合で総合2位になりました。個人の大きな努力とスパルタ戦士のようなチームワークで、ウランを守るファランクス(古代ギリシャで用いられた重装歩兵による密集陣形)を作り、第12、13ステージで総合2位をキープしました。
第3週目の最初のステージは、14番目のカルカッソンヌからキヤンまでの長い山岳コースでした。この日のチームは、活力と自信に満ちていました。特に、チームの成功に常に貢献しているセルジオ・イギータは、ピレネー山脈の丘陵地帯で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。地獄のようなクライム後、イギータは全力で走り、3位でフィニッシュ。コロンビアの若者による見事なパフォーマンスによって、チーム総合では2位となりました。
ピンクを纏ったチームは積極的に笑顔で走る一方、身体は徐々に疲れはじめていました。この2週間半の数千キロメートルにもおよぶ距離と獲得標高による疲労が出てきました。しかし、EFジャージを着た小さな女の子が、恥ずかしそうにリゴにサインを頼みに来ると、リゴは喜んでサインをしてあげました。いつかツール・ド・フランスが女子の大会を作るのなら、この小さな女の子が数年後にパリの表彰台に上るかもしれません。
個人総合でよい結果を出すために、チームは最終ラウンドの準備をしていました。常に戦いに備え、EFチームは全力で臨みました。勇敢な努力にもかかわらず、第17ステージではチームリーダーが個人総合で2位から4位へ順位をさげてしまいました。この小さな変化があっても、彼らは自分たちができることを見せるため、ただただ力を発揮することに集中し続けました。
第18ステージで我らのヒーローは、強い気持ちで戦いました。ウランは力強くスタートしたものの、トゥールマレー峠でリードグループから置いていかれました。しかしこの瞬間、我々のチームは本当の姿を見せてくれました。良いときも悪いときも、チームはお互いを守ります。「大丈夫だ」、「一緒に戦ってるぞ」と言った言葉でチームキャプテンをサポートしました。山岳ステージで戦っていたセルジオ・イギータにも、同じように言葉を掛け合っていました。いつも笑っているイギータは全力で走り、ルス・アルディデンの頂上でステージ順位7位を獲得しました。111番のジャージを着たチームリーダーは、チームの応援にもかかわらず43位となり、個人総合成績を10位に下げてしまいました。
言うまでもなく7月15日、ウランは少し落ち込んでいました。次の写真はウランとチームメイトが第19ステージの準備をしている様子です。彼はこのレースの為にずっと努力をしてきましたが、最終的に9位でフィニッシュ。
2回目の個人タイムトライアルに向け準備が整ったとき、このチームにはもう勝利の希望は無いと思っていました。しかし、彼らは自身の強さと、壊れないチームワークから、力を引き出しました。
新型のタイムトライアルマシンに乗り、第20ステージで世界トップのタイムトライアルライダーたちに挑戦する日。リブルヌからサン・テミリオンまでを、平均速度時速50キロ以上で走ります。背中を丸め、頭を下げ、前を見て、勇気を出しすごいスピードで駆け抜けます。我々のチームメイト2人がトップ10に入りました。
世界でもっともチャレンジングで困難なスポーツイベントの最終日でも、私たちのチームは諦めずに戦います。個人総合優勝の夢は消えても、チーム総合の表彰台の可能性はありました。疲れた足から最後の一滴までグリコーゲンを引き出したヨナス・ルッチは、シャンゼリゼへ先に走り出しました。エネルギーに溢れたシュテファン・ビセガーにミカエル・ヴァルグレンが最後の試みで後ろから近づきましたが、結局はプロトンに追い抜かされました。
ピレネー決戦でリゴベルト・ウランは個人総合順位を10位に下げました。しかし、2021年のレースの最後の瞬間まで、彼の姿勢は変わりませんでした。
『チームリーダーがチームメイトをこれほど自由にさせるのは珍しいです。チームメイトはこの自由のチャンスを掴み、最善を尽くしました。ピレネー山脈での事故は残念でしたが、それはこのスポーツの一部であり、人生の一部だと思っています。このチームは本物であり、私の自慢です。』– チャールズ・ウェゲリス監督
第108回ツール・ド・フランスの閉会式。チームは個人総合の表彰台には乗れませんでした。しかし、努力と忍耐力によりEFエデュケーション・NIPPOはチーム総合で2位を勝ち取りました。血と汗と喜びの涙を流し、最後のパリまで戦い抜きました。フランス全土3,414㎞を走り続けたチームには永遠の強い絆ができました。メンバーは誇りを持って、シャンゼリゼのフィニッシュラインに到着しました。
『ツール・ド・フランスはとても難しいレースです。そして私たちはただの人間です。私たちにできることは、上手にゴールし、チームメイトを称え、次のレースに備えることだけです。』
– ツール・ド・フランス2021個人総合10位 リゴベルト・ウラン